クリスマスシーズンが近づくと、なぜだか無性にジャズが聴きたくなりませんか。
街のカフェやおしゃれな雑貨店で流れる心地よいジャズの音色は、クリスマスの特別なムードをぐっと高めてくれますね。
クリスマスとジャズの結びつきは非常に古くから、私たちが知るクリスマスソングの多くは、ジャズ・アーティストたちによってスタンダード化されてきた歴史があります。
しかし、いざ聴こうとすると「どの名盤を選べばいいの?」「ヴォーカルとインスト、どっちがいい?」「シーンに合うBGMはどう選ぶ?」といった疑問も出てきます。
私自身、そのときの気分やシチュエーションに合わせて、膨大な楽曲群から最適な一枚や一曲を選ぶのに悩むこともあります。
この記事では、クリスマスジャズを構成する定番曲から歴史的名盤、さらには現代的なBGMの活用術まで、幅広くガイドしていきます。
- クリスマスとジャズが強く結びついた歴史的背景
- シーン別(ヴォーカル、インスト)の必聴クリスマス名盤
- カフェやディナーに最適なBGMの選び方
- SpotifyやApple Musicの便利なプレイリスト活用術
クリスマスジャズを彩る定番曲と名盤

まずは、クリスマスジャズと聞いて誰もが思い浮かべる「定番曲」と、そのムードを決定づける「名盤」の世界から見ていきましょう。
なぜクリスマスにジャズがこれほどまでに愛されるのか、その理由と歴史的名作を掘り下げていきます。
クリスマスとジャズの深い関係
そもそも、なぜ私たちはクリスマスにジャズを求めるのでしょうか。
この結びつきは単なる偶然ではない、と私は考えています。
第一に、歴史的な親和性がありますね。
私たちが「クリスマス・ソング」として親しんでいる「White Christmas」や「The Christmas Song」といった楽曲の多くは、ジャズがポップスシーンの中心だった時代(1940年代〜50年代)に生まれ、確立されました。
ビング・クロスビーやナット・キング・コールといったジャズ・ヴォーカリストたちが、これらの曲をスタンダード・ナンバーとして世に広めたわけです。
第二に、心理的な効果が挙げられます。
ゆったりとしたジャズ、特にピアノ・トリオやアコースティックなサウンドは、リラックスした「大人の空間」を演出するのに最適です。
カフェチェーンなどがBGMにジャズを選ぶのも、この効果を狙ってのことでしょう。
クリスマスという特別な日に求める「洗練されたムード」や「おしゃれな雰囲気」に、ジャズの都会的で落ち着いた響きが完璧にマッチすると言えますね。
定番のクリスマスソング名曲
クリスマスジャズを語るうえで欠かせないのが、時代を超えて演奏され続ける「定番曲(スタンダード)」です。
アーティストたちはこれらの楽曲を素材に、独自のアレンジを加えていきます。
- "The Christmas Song" (ザ・クリスマス・ソング)
「暖炉で栗を焼いている…」という歌い出しで有名なこの曲は、ナット・キング・コールの1946年の録音が決定的名演とされています。クリスマスの暖かな情景そのものを象徴する一曲ですね。 - "White Christmas" (ホワイト・クリスマス)
ビング・クロスビーが1942年に発表し、クリスマス・ポップスの歴史を作った曲です。ジャズ・スタンダードの原点の一つと言えるでしょう。 - "Santa Claus Is Coming To Town" (サンタが街にやってくる)
ジャズの即興演奏やスウィング・アレンジの題材として非常に愛されている曲です。ビル・エヴァンス・トリオによるリズミカルなピアノ・アレンジも有名ですね。 - "Jingle Bells" や "Sleigh Ride"
これらの明るい楽曲は、特にビッグバンドやスウィング・ジャズの編成と相性が抜群で、聴くだけで楽しい気分にさせてくれます。
時代を超えるクリスマス名盤
定番曲を個別に聴くのもよいですが、クリスマスのムード全体を決定づけるのは、やはり特定のアーティストによる「アルバム」です。
歴史的巨匠から現代の定番まで、どのアルバムを選ぶかによって、その日のクリスマスの雰囲気が決まるといっても過言ではありません。
ここでは、シーン別におすすめの名盤をいくつか紹介します。
エラなど定番ヴォーカル名盤
ジャズ・ヴォーカルの女王、エラ・フィッツジェラルドは、対照的な2枚のクリスマス名盤を残しています。
この2枚の使い分けは、クリスマスジャズを演出するうえで非常に重要だと私は思います。
- 『Ella Wishes You a Swinging Christmas』 (1960年)
これぞ「ジャズ・クリスマス」の大定番です。スウィンギーなオーケストラをバックに、「Jingle Bells」や「Sleigh Ride」といった明るい曲を歌い上げます。パーティやドライブ、クリスマスの準備をする際のBGMとして最適ですね。 - 『Ella Fitzgerald's Christmas』 (1967年)
こちらは1960年盤とは全く異なり、伝統的・宗教的な賛美歌を中心とした荘厳なアルバムです。「O Holy Night」など、静かな夜に厳かな気分で聴きたい場合に適しています。
同じアーティストでもこれだけ趣が異なるのが面白いところです。
もちろん、フランク・シナトラやナット・キング・コールといった巨匠たちのアルバムも、クリスマスのサウンドを確立した名盤として欠かせません。
スヌーピーとインスト名盤
ヴォーカルが入らないインストゥルメンタル(器楽曲)のアルバムも、クリスマスのムード作りに欠かせません。
- 『A Charlie Brown Christmas』 (ヴィンス・ガラルディ・トリオ / 1965年)
これは単なる名盤を超えた文化的現象です。『スヌーピーのメリークリスマス』のサウンドトラックであり、ジャズ史上世界セールス2位を記録したと言われる大ベストセラーです。私たちが幼少期からクリスマスに触れてきたノスタルジックなピアノ・トリオの響きこそが、「ジャズ=クリスマス」というイメージを決定づけた最大の要因かもしれません。「Linus & Lucy」や「Christmas Time Is Here」など、誰もが知る名曲が詰まっています。 - ビル・エヴァンス (Bill Evans)
ビル・エヴァンス単独のクリスマス・アルバムは公式には存在しません。しかし、彼の詩的で内省的なピアノ・トリオのスタイルが、クリスマスの静かな夜のムードと完璧に合致するため、多くの人がクリスマスに彼のサウンドを求めていると考えられます。 - 『Silent Nights』 (チェット・ベイカー / 1986年)
トランペッター、チェット・ベイカー晩年のクリスマス・アルバムです。ヴォーカルは含まれず、メランコリックなトランペットが賛美歌を演奏します。静寂で内省的な「一人の聖夜」に最適な一枚と言えるでしょう。
ヴィンス・ガラルディやビル・エヴァンスの演奏は、主にピアノ、ベース、ドラムスという「ピアノ・トリオ」編成が基本です。
クリスマスジャズのおしゃれなBGM活用術

ここまでは特定の「名盤」に焦点を当ててきましたが、後半は「BGM」としてのクリスマスジャズの活用術を見ていきましょう。
「カフェ」「ディナー」といった特定のシーンで、空間全体をおしゃれに演出する方法です。
シーン別のおしゃれBGM
BGMとしてのジャズ・クリスマスは、特定のアーティストをじっくり聴くというより、その場の雰囲気に溶け込み、会話を妨げず、数時間にわたって快適に聴き続けられる選曲が求められます。
シーンによって求められるスタイルが異なるのがポイントですね。
カフェで聴きたいジャズBGM
カフェやラウンジで求められるのは、リラックスした雰囲気です。
会話の邪魔にならないインストゥルメンタルが中心になるでしょう。
ヴィンス・ガラルディ(スヌーピー)のピアノ・トリオは、その安心感とノスタルジックな響きから、カフェBGMとして鉄板です。
また、ビル・エヴァンス風の詩的なピアノ・トリオや、ジャズ・ギターのメロウな響きも適しています。
少し趣向を変えて、ボサノバ・アレンジのクリスマスソングも、おしゃれな雰囲気を演出するのに非常に効果的だと考えられます。
ディナーを彩るムードBGM
家庭でのディナーやホームパーティなど、適度な高揚感や華やかさが欲しいシーンでは、ヴォーカル・ジャズが活躍します。
ただし、BGMとして流す場合、静かなバラードばかりだと少し暗くなってしまうかもしれません。
エラ・フィッツジェラルドの『Swinging Christmas』のようなスウィング感のある楽曲や、カウント・ベイシー・オーケストラのような豪華なビッグバンド・サウンドを適度に織り交ぜることで、会話も弾む楽しいムードが作れるでしょう。
Spotifyのおすすめプレイリスト
現代において「BGMを探す」という行為は、「最適なプレイリストを探す」こととほぼ同義になりましたね。
特にSpotifyは、気分やシーンに合わせたプレイリストが非常に充実しています。
「Christmas Jazz」や「Jazz Christmas」といったキーワードで検索すれば、Spotifyが公式にキュレーションした人気のプレイリストがすぐに見つかります。
これらのプレイリストは、定番曲から最新のジャズ・アーティストによるカバーまで幅広く網羅しており、数時間再生し続けても飽きさせない構成になっています。
アルバムを1枚ずつ選ぶ手間が省けるのは、大きなメリットです。
Apple Musicのジャズ名曲
Apple Musicにも、もちろん質の高い公式プレイリストが用意されています。
「クリスマス・ジャズ」というメインのプレイリストのほか、「Christmas Jazz Classics」のようにクラシックな選曲に特化したものや、「クリスマス・スイングジャズ」のようにアップテンポな曲を集めたものなど、ムードに合わせて細かく選べるのが特徴です。
その日の気分でプレイリストを切り替えるだけで、手軽に上質なBGM環境が整うというわけです。
クリスマスのライブ情報
録音された音源(名盤やBGM)とは異なり、その日限りの特別な「体験」を求めるなら、ジャズクラブでの生演奏に足を運ぶのが一番です。
クリスマス・シーズンは、東京のBlue Note(ブルーノート)やCotton Club(コットンクラブ)といった有名なジャズクラブ、あるいはコンサートホールで、クリスマス限定のディナーショーや特別編成のコンサートが数多く企画されます。
ここで重要なのは、ライブを探す「時期」です。
人気のクリスマス・ライブは非常に早い段階でチケットが売り切れてしまいます。
12月に開催されるイベントでも、チケットの一般発売が9月頃から始まるケースは珍しくありません。
12月になってから探し始めては、主要な公演はすでに満席である可能性が高いと考えられます。
本当に価値のあるライブ体験を求めるなら、クリスマス・シーズンの3〜4ヶ月前、つまり「9月頃」から主要なジャズクラブやホールのスケジュールをチェックし始めることをおすすめします。
ジャズクラブやライブハウスに初めて行く場合、服装に迷うこともあるかもしれません。
こちらの記事ではジャズライブに適した服装やマナーを紹介していますので、よろしければ参考にしてください。

最適なクリスマスジャズを見つけよう

クリスマスジャズで探す音楽は、ひとつの答えではなく、個々人が思い描く「理想のクリスマスの雰囲気」そのものだと、私は考えています。
この記事で解説したポイントを、最後に箇条書きでまとめます。
- クリスマスソングの多くはジャズ全盛期に生まれた
- ジャズは「大人のムード」を演出する心理的効果がある
- 定番曲には「The Christmas Song」や「White Christmas」がある
- アーティストは定番曲を独自にアレンジして演奏する
- 名盤選びはクリスマスのムードを決定づける
- エラの『Swinging Christmas』は陽気なパーティBGMに最適
- エラの『Christmas』 (1967年)は荘厳な賛美歌集
- ヴォーカル名盤はシーンに合わせて使い分ける
- スヌーピーのサントラは文化的現象であり鉄板の名盤
- ヴィンス・ガラルディのピアノがノスタルジーを誘う
- チェット・ベイカーの『Silent Nights』は静かな夜向け
- BGMは空間に溶け込む選曲が重要
- カフェBGMはリラックスできるインストが中心
- ディナーBGMは適度に華やかなヴォーカル・スウィングも良い
- SpotifyやApple MusicのプレイリストはBGM探しの近道
- クリスマスライブは特別な体験を提供する
- 人気ライブのチケットは9月頃からチェックが必要
- ライブ情報は必ず公式サイトで最新情報を確認する





