ビバップとは?歴史や特徴、名盤・名曲を初心者向けに解説

ビバップとは?歴史や特徴、名盤・名曲を初心者向けに解説

「ビバップ」という言葉を耳にしたことはありますか?ジャズの一時代を築いたこの音楽スタイルについて、ビバップとはどういう意味?と疑問に思う方もいるかもしれません。

この記事では、ビバップとは何か、その語源から英語での表現、さらにはスイングとの違いや、より広い意味でのジャズとの違いは何か、といった基本的な問いに答えていきます。

また、ビバップ音楽の特徴はどのような点にあるのか、演奏で用いられるビバップスケール、聴くべき名盤や記憶に残る名曲、そして音楽から派生したビバップダンスに至るまで、多角的に掘り下げていきます。

この記事を読めば、ハードバップなど他のバップとの違いも明確になり、モダンジャズの源流であるビバップの全体像が掴めるはずです。

  • ビバップの誕生背景とその歴史的な位置づけ
  • スウィングジャズとは異なるビバップの音楽的特徴
  • ビバップを代表するミュージシャンと聴くべき名盤・名曲
  • 音楽から派生した文化や後世への影響
目次

初心者向け解説!ビバップとは何か?

初心者向け解説!ビバップとは何か?
  • ビバップの語源と意味とは
  • スイングや他のバップとの違い
  • ビバップ音楽の特徴は?
  • ビバップとジャズの違いは?
  • モダンジャズの起源としてのビバップ
  • ビバップは英語でどう表現する?

ビバップの語源と意味とは

ビバップの語源と意味とは

ビバップという言葉の起源には諸説ありますが、最も有力なのは、ジャズシンガーが即興でメロディを歌う「スキャット」の中で使われた、意味を持たない音の羅列から来ているという説です。

例えば「リバップ(Rebop)」や「ウーバップ(Oo-bop)」といったフレーズが演奏中に口ずさまれ、それがスタイル名として定着したと考えられています。

このように、ビバップという言葉自体は、理論的な背景からではなく、演奏現場の雰囲気や感覚から自然発生的に生まれたものです。

したがって、「ビバップとはどういう意味?」と問われれば、特定の意味を持つ単語ではなく、1940年代に生まれた革新的なジャズのサウンドそのものを指す固有名詞である、と理解するのが最も適切です。

この新しい音楽は、それまでのジャズとは一線を画す芸術性を志向していました。

スイングや他のバップとの違い

スイングや他のバップとの違い

ビバップを理解する上で、それ以前に主流だったスウィングジャズや、後に登場するハードバップとの違いを知ることは非常に大切です。

主な違いは、音楽の目的と演奏スタイルにあります。

スウィングジャズは、主にビッグバンドによって演奏される、踊るためのダンスミュージックでした。

分かりやすいメロディと安定したリズムが特徴で、大衆娯楽として広く受け入れられていました。

一方、ビバップは、ライブハウスの閉店後に行われたジャムセッションから生まれた、聴くための音楽、すなわち「芸術音楽」です。

演奏者自身の技術やアイデアを表現することが主目的であり、ダンスミュージックとしての機能は重視されませんでした。

特徴スウィングジャズビバップ
主な目的ダンス、大衆娯楽演奏、芸術的表現
編成ビッグバンド(大人数)コンボ(少人数)
テンポ中速~高速(踊りやすい)高速(超絶技巧的)
リズム4ビートが主体で安定的複雑でシンコペーションを多用
ソロ比較的短く、メロディック長く、コード進行に基づく即興
ハーモニーシンプルで分かりやすい複雑でテンションノートを多用

また、ビバップから派生したハードバップは、ビバップの持つ高度な即興性は維持しつつ、ブルースやゴスペルの要素をより色濃く反映させたスタイルです。

ビバップが持つ知的な側面に、より熱気や感情的な表現が加わったものと考えると分かりやすいでしょう。

ビバップ音楽の特徴は?

ビバップ音楽の特徴は?

ビバップの音楽的な特徴は、いくつかの革新的な要素に集約されます。

第一に、非常に高速なテンポで演奏されることが多い点です。

これは、演奏者の卓越した技術を披露する場となり、聴く者にスリリングな緊張感を与えます。

第二に、複雑なコード進行(ハーモニー)です。

ビバップのミュージシャンたちは、既存の楽曲のコード進行を、代理コードやテンションノートを用いてより複雑なものに作り変える「リハーモナイゼーション」という手法を多用しました。

これにより、アドリブソロの自由度と創造性が飛躍的に高まったのです。

第三に、リズムセクションの役割の変化が挙げられます。

スウィングジャズではバスドラムが4分音符を刻んでリズムの土台を支えていましたが、ビバップではその役割がライドシンバルに移りました。

ドラマーはライドシンバルでリズムをキープしつつ、スネアドラムやバスドラムで即興的なアクセントを加えるようになり、リズムの流動性が格段に増しました。

このスタイルは、ケニー・クラークやマックス・ローチといったドラマーによって確立されたものです。

これらの要素が組み合わさることで、ビバップは即興演奏が主体となる、スリリングで知的なジャズとして確立されました。

ビバップとジャズの違いは?

ビバップとジャズの違いは?

「ビバップとジャズの違いは?」という問いは、初心者の方が抱きやすい疑問の一つですが、これは「セダンと自動車の違いは?」と尋ねるのに似ています。

つまり、ビバップはジャズという大きな音楽ジャンルの中に含まれる、一つの特定のスタイルです。

ジャズには、ニューオーリンズ・ジャズ、スウィング・ジャズ、ビバップ、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズ、フュージョンなど、時代と共に様々なスタイルが生まれてきました。

その中でビバップは、1940年代に登場し、それまでのジャズのあり方を根底から変えた、非常に重要な様式なのです。

ビバップの登場により、ジャズは単なる大衆娯楽音楽から、演奏者の個や芸術性が追求されるアートフォームへと進化しました。

このため、ビバップ以降のジャズを総称して「モダン・ジャズ」と呼ぶことが多く、ビバップはその出発点と位置づけられています。

モダンジャズの起源としてのビバップ

モダンジャズの起源としてのビバップ

前述の通り、ビバップはモダン・ジャズの起源とされています。

1940年代初頭、マンネリ化しつつあったスウィング・ジャズに飽きたチャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといった若手のミュージシャンたちが、ニューヨークのジャズクラブ「ミントンズ・プレイハウス」などで夜な夜な繰り広げたジャムセッションの中で、新しい音楽の萌芽が生まれました。

彼らは、即興演奏の可能性を極限まで追求し、ハーモニーやリズムの概念を拡張しました。

この動きがビバップとなり、ジャズの歴史における大きな転換点となったのです。

ビバップが確立した「少人数のコンボ編成で、テーマ演奏の後に各ソリストが長い即興演奏を繰り広げる」という形式は、その後のモダン・ジャズの基本的な演奏スタイルとして定着しました。

クール・ジャズやハード・バップといった後続のスタイルも、ビバップへの共感や反発といった形で、ビバップを基準点として発展していったものです。

これらの理由から、ビバップを理解することは、モダン・ジャズ全体を理解するための鍵となります。

ビバップは英語でどう表現する?

ビバップは英語でどう表現する?

ビバップは、英語でもそのまま「Bebop」と表記・発音されます。

特別な英訳があるわけではなく、音楽ジャンル名として世界共通で使われています。

口語では、短縮して「Bop」とだけ言うことも非常に多いです。

例えば、「彼はバップのピアニストだ」というように使われます。

このため、ジャズの文脈で「バップ」という言葉が出てきた場合、それは多くの場合ビバップを指していると考えてよいでしょう。

ちなみに、1940年代当時は「リバップ(Rebop)」という呼ばれ方もされていましたが、現在では「ビバップ(Bebop)」という名称が完全に定着しています。

具体的に知るビバップとはどんな音楽?

具体的に知るビバップとはどんな音楽?
  • フレーズを彩るビバップスケール
  • まず聴くべきビバップの名盤
  • 代表的なビバップの名曲を紹介
  • 音楽から生まれたビバップダンス

フレーズを彩るビバップスケール

フレーズを彩るビバップスケール

ビバップの複雑なコード進行の上で、滑らかで理にかなった即興演奏を行うために、ミュージシャンたちは独自の音階、すなわち「ビバップスケール」を編み出しました。

これは、通常の7音スケールに1音(経過音)を付け加えた8音のスケールです。

音を一つ加えることで、スケール内の音の数が8つ、つまり偶数になります。

これにより、4分音符でフレーズを演奏する際に、コードの和声的に重要な音(コードトーン)が強拍(1拍目、3拍目など)に、それ以外の音(経過音)が弱拍(2拍目、4拍目など)に自然に配置されやすくなります。

結果として、高速なパッセージの中でも、コード進行感が明確な、理路整然としたフレーズを生み出すことが可能になるのです。

もちろん、実際の演奏はこれほど単純ではありませんが、ビバップスケールは、あの独特でスリリングなフレーズの根幹をなす理論的な発明の一つと言えます。

このスケールを使いこなすことで、演奏家は複雑なハーモニーの中を自由自在に駆け巡ることができるのです。

まず聴くべきビバップの名盤

まず聴くべきビバップの名盤

ビバップの世界に足を踏み入れるには、やはりその時代の空気を伝える名盤を聴くのが一番です。

ここでは、ビバップの誕生と発展を知る上で欠かせない歴史的なアルバムをいくつか紹介します。

まず、アルトサックス奏者チャーリー・パーカーの録音は必聴です。

特に、彼が若き日のマイルス・デイヴィスと共演したサヴォイ(Savoy)レーベルやダイアル(DIAL)レーベルへの一連の録音は、ビバップの聖典とされています。

『チャーリー・パーカー・ストーリー・オン・ダイアル』などは、パーカーの創造性が爆発した瞬間を捉えた貴重な音源です。

トランペット奏者ディジー・ガレスピーとパーカーが双頭リーダーを務めた『バード・アンド・ディズ(Bird and Diz)』も外せません。

このアルバムでは、ピアノにセロニアス・モンク、ドラムにバディ・リッチという豪華なメンバーが参加しており、ビバップの持つスリリングなインタープレイが楽しめます。

また、ピアニストのバド・パウエルの『ジ・アメイジング・バド・パウエル Vol.1』は、ビバップ・ピアノのスタイルを確立した金字塔です。

彼の圧倒的なテクニックと歌心あふれるフレーズは、後の多くのピアニストに影響を与えました。

これらのアルバムは、1940年代から50年代初頭の録音であり、音質は現代のものと比べると劣るかもしれません。

しかし、その音の向こう側にある、音楽史が変わる瞬間の熱気とエネルギーは、今なお色褪せることがありません。

代表的なビバップの名曲を紹介

代表的なビバップの名曲を紹介

ビバップの時代には、現在でもジャズ・スタンダードとして頻繁に演奏される多くの名曲が生まれました。

これらの曲は、ビバップの音楽的特徴を体現しており、ジャムセッションの定番曲でもあります。

チャーリー・パーカー作曲のブルース進行の曲「ビリーズ・バウンス(Billie's Bounce)」や「ナウズ・ザ・タイム(Now's The Time)」は、シンプルながらビバップのエッセンスが詰まった名演です。

また、複雑なメロディラインが特徴の「ドナ・リー(Donna Lee)」や「コンファメーション(Confirmation)」は、パーカーの天才的な作曲能力と演奏技術を示しています。

ディジー・ガレスピーが作曲した「チュニジアの夜(A Night in Tunisia)」は、ラテン・リズムを取り入れたエキゾチックな雰囲気で非常に人気が高い一曲です。

同じくガレスピー作の「ソルト・ピーナッツ(Salt Peanuts)」は、ユーモラスなテーマと超高速のテンポが印象的です。

ピアニストのセロニアス・モンクが作曲した「52丁目のテーマ(52nd Street Theme)」や「ストレート・ノー・チェイサー(Straight, No Chaser)」も、そのユニークなメロディとハーモニーで多くのミュージシャンに愛されています。

これらの曲を聴くことで、ビバップが単なる超絶技巧の披露だけでなく、豊かな作曲の世界でもあったことが理解できるはずです。

音楽から生まれたビバップダンス

音楽から生まれたビバップダンス

「ビバップ」と聞くと、音楽だけでなく「ビバップダンス」を思い浮かべる方もいるかもしれません。

しかし、ここで注意が必要なのは、このダンススタイルは音楽のビバップが生まれた1940年代に登場したものではない、という点です。

ビバップダンスは、1990年代にイギリスのクラブシーンで生まれた比較的新しいダンススタイルです。

ジャズ、ストリートジャズ、ソウルダンス、レゲエといった様々なダンスの要素が混ざり合って形成されました。

アップテンポのジャズに合わせて、軽快で洗練された足技(ステップ)を繰り広げるのが特徴で、スーツやハットが似合う「渋さ」が魅力とされています。

音楽のビバップが持つ即興性やスリリングな雰囲気にインスパイアされていることは間違いありませんが、歴史的には直接的なつながりはない、別のカルチャーです。

音楽のビバップは踊るためのものではありませんでしたが、その音楽が持つエネルギーが、数十年後に新たなダンススタイルを生み出すきっかけになった、と考えると興味深い関係性と言えるでしょう。

総括:改めてビバップとは何か

総括:改めてビバップとは何か

この記事では、ビバップの語源から音楽的特徴、歴史、代表的な名盤・名曲、そしてダンスに至るまで、多角的に解説してきました。

ビバップとは何か、その全体像を掴む助けとなれば幸いです。

最後に、この記事の要点をまとめます。

  • ビバップは1940年代に生まれた革新的なジャズのスタイル
  • 語源はスキャットで使われた意味のない音の羅列という説が有力
  • 英語でも「Bebop」または「Bop」と呼ばれる
  • ダンス目的のスウィングとは異なり、芸術性を追求した「聴くため」の音楽
  • チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーが創始者とされる
  • 高速なテンポ、複雑なコード進行、長い即興演奏が主な特徴
  • リズムセクションの役割が変化し、より流動的になった
  • ビバップ以降のジャズを「モダン・ジャズ」と呼び、その起源に位置づけられる
  • ビバップスケールは複雑なコード進行に対応するための音階
  • サヴォイやダイアル盤のチャーリー・パーカーの録音は必聴の名盤
  • 「Donna Lee」や「A Night in Tunisia」は今も演奏される名曲
  • ハード・バップはビバップにブルースやゴスペルの要素を加えた発展形
  • ビバップは単なる音楽様式ではなく、ジャズを芸術へと昇華させた革命だった
  • ビバップダンスは90年代に生まれた、音楽に影響を受けた別の文化
  • そのDNAは現代のジャズミュージシャンにも受け継がれている
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