ジャズの歴史に興味を持ったものの、その全体像をつかむのはなかなか大変ですよね。
ジャズの誕生から始まり、スウィング・ジャズ、ビバップ、モダン・ジャズ、クール・ジャズ、ハード・バップ、モード・ジャズ、フリー・ジャズ、そしてフュージョンに至るまで、非常に多くのスタイルが存在します。
この複雑な流れや時代ごとの特徴、押さえておくべき有名人などをどう理解すればよいか、迷ってしまうこともあるかもしれません。
この記事では、ジャズの歴史の大きな流れを追いながら、各時代がどのような背景で生まれ、どう移り変わっていったのかを、年表も交えながらわかりやすく解説していきます。
- ジャズ誕生から現代までの大きな流れ
- 各時代の代表的なスタイルとその特徴
- ジャズの歴史を形作った重要なアーティスト
- ジャズの進化が一目でわかる年表
ジャズの歴史:誕生からビバップ革命まで

ジャズの物語は、19世紀末のアメリカ南部から始まります。
ここから、ジャズが「大衆のダンス音楽」として全盛期を迎え、やがて「聴く芸術」へと変貌を遂げる最もドラマチックな時代までを追いかけてみましょう。
ジャズの誕生とニューオーリンズ
ジャズの歴史を語る上で、ニューオーリンズという都市は欠かせません。
19世紀末から20世紀初頭、このルイジアナ州の港町は、多様な文化が混ざり合う「坩堝(るつぼ)」でした。
ヨーロッパの和声理論や楽器演奏技術を持つ「クレオール・オブ・カラー」と、アフリカのリズム感やブルースのフィーリングを持つ「解放奴隷」たち。
この二つの異なるバックグラウンドを持つ人々が、社会的な変動の中で出会い、互いの音楽を融合させたことがジャズの起源と考えられます。
初期のジャズは、マーチング・バンドの形式やラグタイム(シンコペーションが特徴のピアノ音楽)の要素を取り入れながら、主にダンスホールや歓楽街「ストーリーヴィル」で演奏される実用的な音楽として発展しました。
ルイ・アームストロングとジャズ・エイジ
1917年にストーリーヴィルが閉鎖されると、多くのミュージシャンは職を求めてシカゴやニューヨークへと北上します。
これがジャズが全米に広がるきっかけとなりました。
1920年代は「ジャズ・エイジ(狂騒の20年代)」と呼ばれ、ジャズはその時代のサウンドトラックとなります。
この時代に登場したのが、ジャズの歴史における最初の革命家、ルイ・アームストロングです。
彼の功績は、それまで「集団即興」が中心だったジャズを、「個人の即興ソロ」が輝く音楽へと変えた点にあります。
彼が1920年代半ばに録音した「ホット・ファイブ」や「ホット・セブン」の演奏は、即興演奏を芸術の域にまで高め、その後のジャズのあり方を決定づけたと考えられます。
スウィングとビッグバンドの時代
1930年代、世界恐慌の暗い時代に、ジャズは「スウィング・ジャズ」として最大のポピュラー音楽の座に就きました。
スウィングは、ビッグバンドと呼ばれる大人数の編成で演奏される、陽気で踊りやすいダンス音楽です。
この時代、即興演奏はやや後退し、楽譜に基づいた緻密なアンサンブル(合奏)が重視されました。
デューク・エリントン、ベニー・グッドマン、カウント・ベイシーといったスター的なバンド・リーダーたちが、ラジオやダンスホールを通じてスウィングを全米に広め、人々を熱狂させたのです。
スウィング・ジャズについては、ビバップとの違いや代表的な名曲をまとめた記事もあります。
スウィングがどのような音楽だったか具体的に知りたい方は、こちらの『スウィング・ジャズとは? ビバップとの違いと名曲・歴史を解説』もぜひご覧ください。

ビバップ:モダン・ジャズの始まり
1940年代半ば、第二次世界大戦が終結する頃、スウィングの商業主義や音楽的なマンネリに反発した若い黒人ミュージシャンたちが、ニューヨークのジャム・セッションで新たな音楽を生み出します。
それが「ビバップ」です。
ビバップは、スウィングとは対極にあります。
ダンスを拒否するような高速なテンポ、複雑な和音(コード進行)、そしてその上で行われる超絶技巧の即興演奏が特徴です。
チャーリー・パーカー(サックス)やディジー・ガレスピー(トランペット)らが中心となり、ジャズは「みんなで踊る音楽」から「真剣に聴く芸術(アート・ミュージック)」へと、その性格を根本から変えました。
これが「モダン・ジャズ」の幕開けというわけです。
ビバップはジャズの歴史において非常に重要な転換点です。
このスタイルについてもっと深く掘り下げたい方は、ぜひ以下の記事もご覧ください。

クール・ジャズとウエストコースト
ビバップの熱狂的で混沌としたサウンドへの反動として、1940年代末から「クール・ジャズ」が生まれます。
その名の通り、熱っぽさ(Hot)に対して冷静(Cool)な、抑制的で知的なサウンドが特徴です。
ビバップの複雑な和声は受け継ぎつつ、穏やかなリズムやクラシック音楽の影響を受けたアンサンブルが重視されました。
このスタイルは、トランペット奏者のマイルス・デイヴィスが主導した『クールの誕生』というアルバムで方向性が示され、特に西海岸(ウエストコースト)の白人ミュージシャンたちによって発展したため、「ウエストコースト・ジャズ」とも呼ばれますね。
ハード・バップの熱量とグルーヴ
一方、1950年代の東海岸では、クール・ジャズの「冷たさ」に対抗するように、ビバップの持つエネルギーを継承し、さらにジャズの原点である「ブルース」や「ゴスペル」のフィーリングを強く打ち出したスタイルが登場します。
これが「ハード・バップ」です。
アート・ブレイキー率いる「ザ・ジャズ・メッセンジャーズ」などに代表される、力強くファンキーな(泥臭い)グルーヴが特徴です。
この時代は、アメリカで公民権運動が高まっていた時期とも重なります。
ハード・バップは、アフリカ系アメリカ人としてのアイデンティティを再確認するという社会的な意味合いも持っていたと考えられます。
ジャズの歴史:モードから現代までの流れ

ビバップ革命によって「芸術」となったジャズは、1950年代後半からさらにその表現方法を深化させていきます。
ここでは、ジャズがより自由な表現を求め、ロックやヒップホップなど他ジャンルと融合しながら現代に至るまでの流れを見ていきましょう。
モード・ジャズによるコードからの解放
ビバップからハード・バップまでの即興演奏は、目まぐるしく変わる「コード進行」に強く縛られていました。
1950年代後半、この「コードの束縛」から演奏者を解放する新たな革命が起こります。
それが「モード・ジャズ」です。
モード(旋法、特定の音階)というシンプルなルールの上で、演奏者はより自由に、水平的にメロディーを紡ぐことに集中できるようになりました。
この革新を決定づけたのが、またしてもマイルス・デイヴィスでした。
彼が1959年に発表したアルバム『カインド・オブ・ブルー』は、モード・ジャズの金字塔であり、ジャズ史上最も重要な名盤の一つとされています。
フリー・ジャズの自由への探求
モード・ジャズが「コード進行」から解放された後、1960年代に入ると、ジャズはさらに過激な自由を求めます。
「モード(音階)」や「一定のリズム」といった音楽のあらゆるルールから解放されようとする動き、それが「フリー・ジャズ」です。
オーネット・コールマンらが推し進めたこのスタイルは、無調音楽に近く、カオスとも言えるサウンドで、聴衆や批評家から激しい賛否両論を巻き起こしました。
ジャズの歴史を「自由への探求」と捉えるなら、その論理的な最終形態の一つと言えるかもしれません。
フュージョンと他ジャンルの融合
1960年代末、フリー・ジャズで芸術的な極北に達したジャズは、再び大衆と接続するために、同時代に隆盛していた「ロック」や「ファンク」と融合する道を選びます。
これが「フュージョン」です。
マイルス・デイヴィスがエレクトリック楽器を全面的に導入し、ロックの8ビートを取り入れた『ビッチェズ・ブリュー』でその流れを決定づけました。
ビバップが「大衆からの分離」であったのに対し、フュージョンは「新たな大衆への再接続」を目指す動きだったわけです。
1990年代以降は、ヒップホップのビートとジャズの和声を融合させたロバート・グラスパーのようなアーティストが登場するなど、ジャズは他ジャンルと混ざり合いながら、今もなお進化を続けています。
ジャズの歴史を彩る有名人
ジャズの歴史は、革新的な「有名人」たちによって作られてきました。
- ルイ・アームストロング
ジャズに「ソロ」という概念をもたらした最初の天才。 - デューク・エリントン
ビッグバンドを率い、ジャズを作曲芸術として高めた。 - チャーリー・パーカー
ビバップを生み出し、モダン・ジャズの父となった。 - マイルス・デイヴィス
クール、モード、フュージョンなど、常に時代の最先端を走り、ジャズのスタイルを何度も塗り替えた「帝王」。 - ジョン・コルトレーン
モード・ジャズやフリー・ジャズの領域で、精神性の高い演奏を追求した。
もちろん、これはほんの一部です。
ビル・エヴァンス、セロニアス・モンク、アート・ブレイキーなど、数えきれないほどの個性的なミュージシャンたちが、この歴史を豊かにしています。
もし「これからジャズを聴き始めたい」「どんな名盤から聴けばいいか分からない」という場合は、ジャズの聴き方や楽しみ方、代表的な名盤をまとめた入門ガイドも参考になるかと思います。

一目でわかるジャズの歴史と年表
ジャズの歴史は、アメリカの社会史や技術革新と密接に結びついています。
この複雑な流れを、年表で簡潔に整理してみましょう。
| 年代 | 主なスタイル | 特徴・主要アーティスト |
|---|---|---|
| 1900年代 | ニューオーリンズ・ジャズ | 集団即興、ダンス音楽(バディ・ボールデン) |
| 1920年代 | ジャズ・エイジ | ソロの確立(ルイ・アームストロング) |
| 1930年代 | スウィング・ジャズ | ビッグバンド、ダンス音楽(デューク・エリントン) |
| 1940年代 | ビバップ | 芸術音楽化、高速な即興(チャーリー・パーカー) |
| 1950年代 | クール・ジャズ | 抑制的、知的(マイルス・デイヴィス『クールの誕生』) |
| 1950年代 | ハード・バップ | ブルース回帰、ファンキー(アート・ブレイキー) |
| 1959年 | モード・ジャズ | コードからの解放(マイルス・デイヴィス『カインド・オブ・ブルー』) |
| 1960年代 | フリー・ジャズ | あらゆるルールの撤廃(オーネット・コールマン) |
| 1970年代 | フュージョン | ロックやファンクとの融合(マイルス・デイヴィス) |
| 1990年代~ | 多様化 | ヒップホップとの融合など(ロバート・グラスパー) |
ジャズの歴史を辿る総まとめ

ジャズの歴史は、一つの壮大な物語です。
その流れを最後にまとめておきます。
- ジャズは19世紀末ニューオーリンズで誕生した
- ヨーロッパの和声とアフリカのリズムが融合した
- 初期は集団即興が中心のダンス音楽だった
- ストーリーヴィル閉鎖でジャズは北上し全米へ広まった
- 1920年代は「ジャズ・エイジ」と呼ばれた
- ルイ・アームストロングが「ソロ」の概念を確立した
- 1930年代はスウィング・ジャズが全盛期だった
- ビッグバンドによるアンサンブル重視のダンス音楽だった
- 1940年代にビバップ革命が起きた
- チャーリー・パーカーらが「聴くための芸術」へ変えた
- ビバップから「モダン・ジャズ」が始まった
- ビバップへの反動としてクール・ジャズが生まれた
- ブルース回帰のハード・バップも隆盛した
- 1950年代末にモード・ジャズが誕生した
- マイルス・デイヴィスがコードの束縛からジャズを解放した
- 1960年代はフリー・ジャズが自由を追求した
- 1970年代はロックと融合したフュージョンが流行した
- 現代ではヒップホップなどとも融合し進化を続けている







