ジャズと一口に言っても、非常に多くのスタイルが存在していて戸惑ってしまいますね。
ジャズ 種類と調べてみたものの、カタカナの専門用語が並ぶ一覧を見て、結局どれが自分に合うのか、聴きやすいのはどれか、違いがよくわからない、と感じている方も多いのではないでしょうか。
実際、ジャズは100年以上の歴史の中で、年代順にさまざまな音楽と影響し合いながら進化してきました。
そのため、有名な曲やアーティストも、どのジャンルに属するかによって雰囲気が全く異なります。
この記事では、複雑に見えるジャズの種類について、その歴史的な流れと音楽的な特徴を整理しながら、それぞれの魅力に迫っていきます。
- ジャズの歴史的な変遷と主な種類
- 各ジャンルがどのように融合して生まれたか
- 現代ジャズに至るまでの流れ
- 自分の好みに合うジャズスタイルのヒント
ジャズの種類を歴史でたどる

ジャズがどのように生まれ、発展してきたのか。
その歴史をたどることは、多様な種類を理解する上で非常に重要です。
ここでは、ジャズの根幹となるスタイルから、ダンス音楽として一世を風靡した時代、そしてラテン音楽との出会いまで、初期から中期の主要な流れを見ていきましょう。
原点としてのジャズ・ブルース
ジャズのルーツを深く掘り下げていくと、必ず「ブルース」という音楽形式に行き当たりますね。
19世紀末、アメリカ南部のニューオーリンズなどで、アフリカ系アメリカ人の労働歌やスピリチュアル(黒人霊歌)を背景に生まれたのがブルースです。
これは単なる音楽ジャンルというだけでなく、彼らの喜びや、とりわけ悲しみや苦悩といった魂の叫びを表現する手段でした。
音楽理論の側面から見ると、ブルースは「ブルーノート」と呼ばれる特徴的な音階(スケール)を使用します。
これは、西洋音楽のドレミファソラシドという音階における特定の音(主に3度、5度、7度)を微妙に下げることで、独特の哀愁や「ブルージー」な響きを生み出すものです。
ジャズは、このブルースのコード進行やメロディの感覚を基盤に取り入れながら、即興演奏やスイングのリズムといった要素を加えて発展していきました。
つまり、ジャズ・ブルースとは、ジャズという言語でブルースを演奏する、まさにジャズの「原点」と言えるスタイルです。

ダンス音楽としてのスイングジャズ
1930年代に入ると、ジャズは大きな転換期を迎えます。
それまでの小編成での演奏から、10数名以上からなる大編成の「ビッグバンド」スタイルが主流となりました。
これが「スイングジャズ」と呼ばれるものです。
この時代の背景には、世界恐慌による暗い世相がありました。
人々はつかの間の楽しみを求め、ダンスホールに集まったわけです。
スイングジャズは、まさにそのダンスのための伴奏音楽として爆発的な人気を獲得しました。
音楽的な特徴は、明確で踊りやすい4ビートのリズムと、譜面に基づいてアレンジされた華やかなアンサンブルです。
もちろん即興演奏(ソロ)のパートもありますが、それ以上にバンド全体の一体感や豪華なサウンドが重視されたと言えますね。
デューク・エリントンやカウント・ベイシーといった有名なバンドリーダーたちが、この時代を象徴する数々の名曲を生み出しました。

ビバップがもたらした即興演奏
1940年代、スイングジャズの商業的な成功とマンネリ化に飽き足らない若手のミュージシャンたちが、ニューヨークのジャズクラブで夜な夜な集まり、新たな音楽を模索し始めます。
こうして生まれたのが「ビバップ」です。
ビバップは、スイングジャズとは対極にある音楽性を持っています。
最大の違いは、ダンスのための伴奏音楽から、「聴くため」の芸術音楽へとジャズを引き上げた点です。
編成も再び小編成(コンボ)に戻り、音楽の焦点は「アンサンブル」から個々の演奏者の「即興演奏(アドリブ)」へと完全に移行しました。
その特徴は、超高速なテンポ、スタンダード曲のコード進行を意図的に複雑にしたハーモニー、そしてその上で行われるスリリングなソロの応酬です。
チャーリー・パーカーやディジー・ガレスピーといった天才たちが、この新しいジャズの言語を確立したわけですね。
これ以降のジャズは「モダン・ジャズ」と呼ばれ、ビバップはその革命的な起点とされています。

感情的な響きのソウル・ジャズ
ビバップが高度な理論や技巧を追求した一方で、1950年代には、ジャズの原点であるブルースやゴスペル(黒人教会音楽)のフィーリングを再び強く打ち出す動きも現れます。
これが「ハード・バップ」と呼ばれるスタイルで、その中でも特に感情的で力強いグルーヴを持つものを「ソウル・ジャズ」や「ファンキー・ジャズ」と呼ぶことがあります。
ソウル・ジャズは、ビバップの高度な即興演奏のロジックは受け継ぎつつも、より「わかりやすく」「心に響く」音楽を目指したと考えられます。
聴いていて自然と体が揺れるようなファンキーなリズムや、ゴスペルの「コール・アンド・レスポンス(呼びかけと応答)」のような親しみやすいメロディが特徴です。
アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズや、ピアニストのホレス・シルヴァーらが、このスタイルの代表的なアーティストとして挙げられますね。
ビバップが少し難解に感じられる場合でも、ソウル・ジャズの持つ「魂」の響きは、多くの人にとって受け入れやすい魅力があると言えるでしょう。

ラテンと融合したボサノバ
ジャズの歴史は、他の音楽ジャンルとの融合の歴史でもあります。
その代表例の一つが、1950年代末から1960年代にかけてブラジルで生まれた「ボサノバ」です。
ボサノバは、ブラジルの伝統的なポピュラー音楽である「サンバ」のリズムと、ジャズの洗練されたハーモニー(和声)が融合して誕生しました。
アントニオ・カルロス・ジョビンやジョアン・ジルベルトといったアーティストたちがその中心人物ですね。
ボサノバの特徴は、ささやくような歌声、複雑でありながらも美しいコード進行、そして独特のゆったりとしたリズム(「バチーダ」と呼ばれるギター奏法など)にあります。
このスタイルはアメリカにも渡り、ジャズ・サックス奏者のスタン・ゲッツがジョアン・ジルベルトらと共演したアルバム『ゲッツ/ジルベルト』が大ヒットしました。
厳密にはボサノバはブラジル音楽の一ジャンルですが、ジャズの側からも盛んに取り入れられ、「ジャズ・サンバ」とも呼ばれるなど、ジャズの種類を語る上では欠かせない存在となっているわけです。

多様化する現代のジャズの種類

1960年代後半以降、ジャズはさらにその表現の幅を広げていきます。
ロックやファンクといった同時代のポピュラー音楽の要素を積極的に取り入れたり、クラブカルチャーと結びついたりすることで、ジャズは「モダン・ジャズ」の枠組みを超えて多様化していきました。
ここでは、現代に至る融合のスタイルを見ていきましょう。
ロックと融合したジャズ・ロック
1960年代後半、ロック・ミュージックが世界的なムーブメントとなる中で、ジャズ・ミュージシャンたちもその影響を強く受け始めます。
この流れから生まれたのが「ジャズ・ロック」です。
それまでのジャズが4ビートを基本としていたのに対し、ジャズ・ロックは、ロック特有の強力な8ビートや16ビートのリズムを導入しました。
また、楽器編成も大きく変わり、アコースティック楽器に加えて、エレキギター、エレキベース、シンセサイザーといった電気楽器が積極的に使われるようになったのが大きな特徴です。
マイルス・デイヴィスがこの動きを牽引し、ジャズの即興性とロックのエネルギーを融合させた革新的なサウンドを生み出しました。

ジャズ・フュージョンと電気楽器
1970年代に入ると、ジャズ・ロックの流れはさらに発展し、「フュージョン」という一大ジャンルを形成します。
「フュージョン」とは「融合」を意味する言葉で、その名の通り、ジャズ、ロック、ファンク、ソウル、ラテンなど、あらゆる音楽の要素が文字通り融合したスタイルです。
ジャズ・ロックとの明確な境界線はありませんが、フュージョンはより洗練され、テクニカルな即興演奏が重視される傾向があったと言えますね。
チック・コリアやハービー・ハンコック、ジャコ・パストリアスといった、ジャズの高度な技術を持つミュージシャンたちが、電気楽器を駆使して、それまでのジャズにはなかった新しいサウンドスケープを切り開きました。
特に電気楽器の進化は、フュージョンの発展に不可欠でした。
シンセサイザーによる多彩な音色や、エフェクターを使ったギターやベースのサウンドは、この時代のジャズを象徴するものとなっています。

グルーヴ重視のジャズ・ファンク
フュージョンと同時期、あるいはその一部として、特に「ファンク」の要素を強く取り入れたスタイルが「ジャズ・ファンク」です。
ファンク・ミュージックは、ジェームス・ブラウンなどに代表される、反復的なベースラインと強力なリズム(グルーヴ)を特徴とする音楽です。
ジャズ・ファンクは、このファンクの「踊れる」リズムパターンを土台に、ジャズの即興演奏やハーモニーを乗せたスタイルと言えます。
フュージョンが時にテクニカルで難解な側面を持つのに対し、ジャズ・ファンクは、よりストレートに体のリズムに訴えかける、わかりやすいノリの良さが魅力ですね。
ハービー・ハンコックの『ヘッド・ハンターズ』などは、このスタイルの代表的なアルバムとして非常に有名です。

クラブシーンとジャズ・ヒップホップ
1980年代末から1990年代にかけて、ジャズは演奏家のシーンからだけでなく、クラブカルチャーからも新たな光を当てられることになります。
一つは、ロンドンのDJたちが70年代のジャズ・ファンクのレコードを再発掘し、ヒップホップのビートと組み合わせたことから始まった「アシッド・ジャズ」です。
これは「知的で踊れる音楽」として、ファッションとも結びつき大きなブームとなりました。

もう一つが、アメリカで生まれた「ジャズ・ヒップホップ(ジャズ・ラップ)」です。
これは、ヒップホップのトラックメイカーたちが、過去のジャズのレコード(特にビバップやハード・バップ)からフレーズをサンプリング(抜き出し)し、それをループさせてラップを乗せるという手法で生まれました。
ア・トライブ・コールド・クエストやファーサイドなどがその代表格ですね。
これらの動きは、ジャズが「過去の遺産」ではなく、サンプリングという手法を通じて「現代の音楽」として再構築され、新たな世代に受け入れられていったことを示しています。

お気に入りのジャズの種類を見つけよう

ここまでジャズの多様な種類を、歴史と融合の観点から見てきました。
- ジャズの種類は100年以上の歴史の中で生まれた
- 原点はブルースという音楽形式にある
- ブルーノートはジャズに哀愁を与える
- スイングジャズはビッグバンドによるダンス音楽
- ビバップは聴くための芸術音楽への転換点
- ビバップ以降がモダン・ジャズと呼ばれる
- ソウル・ジャズはブルースやゴスペルの影響が強い
- ハード・バップやファンキー・ジャズとも呼ばれる
- ボサノバはブラジルのサンバとジャズの融合
- ジャズ・ロックはロックの8ビートや電気楽器を導入
- フュージョンはジャズと他ジャンルの「融合」
- ジャズ・ファンクはグルーヴを重視したスタイル
- アシッド・ジャズはクラブカルチャーから発生
- ジャズ・ヒップホップはジャズのサンプリングが特徴
- ジャズは今も進化と融合を続けている
このように、ジャズには本当に多くの側面があります。
まずは気になったジャンルの代表的な曲から聴き始めて、そこからご自身の「お気に入り」を見つけていくのが良いかもしれません。





